ぱわれす でいす 17 シンデレラ篇 00/5/21

最近ほとんど更新されないので、「もう飽きたか」「ネタ切れか」「生きとんのか」等色々お考えかもしれませんが、理由は単に「忙しい」だけなので、どうぞご心配なく。

しかし忙しい。今までの人生でこんなに働いたことはないくらいだ。
終電に乗るために連日0時にあわただしく職場から消える自分をひそかに「シンデレラ」と呼んでいる。できれば他の人から呼んでほしいのだが、誰もちょっと思いつかないようだ。

もちろん早く帰ろうと思えば帰れないことはないのだが、関わっている分野の市場が今めちゃくちゃ「沸いて」いるので、ここで寝てちゃいけない、今がんばらずにいつがんばるのだ、ライバルは寝てないぞーという気になり、つい過剰に働いてしまう。「受験生みたいですね」と、デキル後輩Hくんの言葉通りだ。
ちゃんと監督しなければ働いてしまう社員。会社にとっては痛し痒しか。

お陰で、というか、余剰効果で痩せられた。残業ダイエット。ここで調子に乗って7号の服なんか買わないという理性が大切だ。
ただ同じくらい働いている隣のJくんはどんどん太っていく。どういうことだろう。部内体重不変の法則というのがあるのかもしれない。誰かが痩せた分誰かが太る。部内総重量はいつも一定。


・・・こうやって自分の生活を客観的にみるとめちゃくちゃ不健康ではないか。みなさんに心配させてはいけないと思って書いてみたのだが、これじゃよけい心配だろう。すみません。来週からシンデレラ返上の予定です。
このコラムの1週間後、やはり年齢には勝てず、電池が切れてダウン。6・7月と長期休暇中。「ぱわれす でいず」もしばらく休刊


ぱわれす でいず  16  マイ社長篇
  00/5/10

今日は「ある企業の社長へのプレゼンテーションの、ピンチヒッターをしなければならないかもしれない」というややこしい状況の日だった。

「自分でほとんど理解していない企画」「プレゼンテーション」、おまけに「社長」という各要素で、前夜からほとんど浮き足状態だった。一番大きな浮き足点は「社長」だ。
知っていることは、とにかく相手が「社長」と言うことだけで、会社の規模とか、人となりがどうだとか、大事なポイントは全然押さえていない。担当者にきけばすむ話なのだが、「社長」と聞いただけで、無意識のうちに私が今まで出逢った数少ない、しかも特殊な「社長」たちの群像が一つになって、堅固な「社長ユーザーイメージ」をモンタージュしてしまっていた。

私のイメージ上の「社長」とは、決して「出井伸之」や「樋口廣太郎」ではなく、わかりやすい例で言うと「中内功」+「三浦和義」にナベツネをちょっと入れた感じ。
なんじゃそりゃ。

で、普通クライアントに逢うときにはとにかく「賢そうに見せる」をコンセプトに、ぴしっと堅めのスタイルで臨むのだが、今朝はおもわず「真っ赤なスーツ」に「おもいっきり胸の開いたブラウス」で来てしまった。私のイメージの貧困さと偏見がはからずも露呈された。(あ、年齢のことはつっこまんでよろしい)

結局、ピンチヒッターの出番はなく、「社長」に逢うこともなかった。聞けばまだ若い、普通の人だったらしい。
危険なもんだ人間の思いこみってのは。

って、一般化して反省するな。




ぱわれす でいず  15  なめくじ篇  00/4/8

なめくじが嫌いな人は読まないでください。

当家にはなめくじが多い。多いのはなめくじだけではないのだが、とりあえず今はなめくじの話だ。

夏場なら、風呂場に必ず2匹はいる。ナメクジでも足は滑るのか、ときどき湯船に落ちて出汁をだしている。(さすがの私もその場合は焚き直すことにしていますから、ご安心を。)

暖かくなって、また見かけるようになった。
ミミズだってカエルだって生きているんだともだちなんだ、と刷り込まれた世代の私は、穏便に排水溝からお引き取りいただくことにしていたが、ある日髪を洗っていて、手探りでつかんだシャンプーに「ぐちょ」という冷たい感触。その瞬間、私の頭から理性もてのひらの太陽も吹き飛んだ

哀れななめくじは、バスマジックリンをどぼどぼ浴びせられて悶死した。人間なら硫酸を全身にぶっかけられたようなもんだろう。私の博愛精神なんてこんなもんだ。

そのほか、年に2回は床を歩いている奴を素足で踏む。そのときもパニックだ。

よーく観察してなじんだら愛情が湧くかもと思い、しばらく見つめてみたことがあるが逆効果だった。心の底から嫌いになった。

「どうにかしたいのだが何かないか」と、もと薬屋の倅である家人に相談すると、「あるよ」と出してきたのが
「ナメトックス」

なめとんかぁ!というプリミチブなツッコミは厳に慎みたい。命名者を喜ばせるだけだ。効くんだろうか。効かなくても誰も怒らないだろう。だって「ナメトックス」だ。それも戦略か。だったらお見事と言うしかない武田園芸資材株式会社。おまけに有効期限は87年。
今年も共存するしかなさそうだなめくじと。

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前のぱわれすで「天むすライダーズ」のことを書いたが、彼らがいつもたむろしている店先の、バイクの道具箱の上に本が置いてあった。
「魂の駆動体」
熱いじゃないか。なんだかうれしくなった。



ぱわれす でいず  14  深夜のチカン篇  00/3/31

深夜のすかすかの東西線で、チカンに遭遇した。

チカン行為を受けるのは、考えてみれば20年ぶりくらいだ。
と、感慨に耽っている場合ではないが、10数年もチカンのプロムナード御堂筋線先頭車両で通勤して一度も巡り会わなかった、というか標的にされたことはないのに、どうしたことだこれは。とその手の主を見ると、へろへろの酔っぱらいである。

いや別に気を悪くしたとかそういうわけではないが、チカンという犯罪行為に及ぶならば、明晰な判断力を備えた状態で、意志と覚悟のもとに決行するのが正しい痴漢道というものではないのか。
だいたいちゃんと見たのか私の顔とか形状とか。

しかし、それより問題にしたいのが私自身の反応である。
その非常事態に、「きゃあ!」「いやー!」というギャルなリアクションも、「何するのよ!」というウーマンな怒りもまるで出てこず、「もお、なにすんねんな、お兄さん」と、「おばはん」のような対応をしてしまったのだ。

最近酸っぱいものと甘いものの噛み分け能力が進んでいるのは自覚していたが、とっさの事態にこれではちょっとなあ。チカン氏も伸ばした手の引っ込め方に困っていたようだった。
今度しらふの真剣なチカンに逢ったら、ちゃんと騒いだり制裁を加えたりしよう。電車の中でも臨戦態勢。いつでも来いだ。(20年後か?)

あ、興味のある方のためにつけ加えますと、さわられたのは右のお尻です。



ぱわれす でいず  13  天むすライダーズ篇  00/3/24

駅から会社までの通勤路に、ひたすら「天むす」のみを製造販売している「天むす屋」がある。あえて説明するまでもないが、「天ぷら入りおむすび」略して「天むす」。ドアにはほほえむ自民党加藤派末広まきこ。

その店には、製造した「天むす」を各販売店に配達するのが仕事であろうライダーボーイが2名いて、バイクの手入れをしたり、店の前で少年サンデーを読んだりしている。

スキンヘッドの彼は、たくさんピアスをして、暑い夏は頭にタオルを巻き、寒い冬は頭にタオルを巻き、春や秋は(きっと)特に意味もなく頭にタオルを巻いている。日本手ぬぐいのときもある。(「天むす」の商標が入っていたかどうかは未確認。)
若いやつがファッションで巻くタオルとは明らかに意味が違う気がする。「寒いのお」とか「暑いのお」とか、きっと心のおもむくままにその辺にあるもんを頭に巻いてしまうのだろう。

昼どきなど、彼らがビールのカートンに座ってカップうどん食べているところに遭遇したりすると、とてもハッピーな気分になる。

気の利いたことを言おうとしたり、服装のセンスにこだわったり、自分を等身大以上にアピールしようとする人(ん?私か?)が多い昨今、彼らはとってもナチュラルでアトラクティブだ。きっと「本当の自分って何?」なんてくだらないことに悩んだことないに違いない。

天むすライダーズ。今のマイ・フェイバリッドだ。
なんとか彼らとお友達になる方法はないだろうか。
毎日天むす買いにいってみようか。考えただけで胸焼けするが。


ぱわれす でいず  11  弟篇  00/3/4

私には弟がいる。

弟というものはどの弟も総じてカサ高いものだが、私の弟は「身体鍛えおたく」なので、並の弟に増して容積がでかい。
日々の鍛錬のおかげで、腕も胸もすごいことになっているのだが、背広を着ればただ太っているようにしか見えず、旧友に「オマエ太ったなー」と言われる度にむっとしている。

その彼の通うジムが最近閉店したという。元ミスターのタイトルを持つ有名なボディビルダーが指導しており、関西各地から「身体鍛え」に命を燃やす根性ビルダーが集う道場だったらしい。

仕方なく近所のスポーツクラブに見学に行った弟は、「あかん。ぬるい。」と帰ってきた。
彼の基準では、60キロのダンベルが転がり、そこかしこで「ぬおおおー!!」と雄叫びが上がっていなければ駄目らしい。
「明るく、爽やか」が尊ばれる昨今、それは難しい要求だろう。第一それは健康なのか?

その道場から散った求道者たちはどこへ行ったのだろうか。聞けば、京橋にあとひとつそのようなジムがあるという。
そういえば、京阪電車の窓から「君もシュワルツネッガーになれる!」と大書した看板(イラスト入り)を見て大笑いした覚えがあるが、あれか・・・?
あの建物の中では、充満する汗の熱気とともに「ぬおおおー!」「とりゃあああー!!」と男たちの叫びがこだましているのか。見たい。いや見たくない。

弟には弟の人生がある。あるのだが、凡人の姉は、きれいなインストラクターを目当てに明るいフィットネスクラブに通う、既成服も着られる弟であってほしいと、つい願ってしまうのである。



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