ぱわれす でいず 25 モスキート篇 00/8/26 この季節、当家には猫・ネズミ・イタチといった小動物、カナブン・蜂・蝿・蛾・蚊・蜘蛛・蟻などの虫が自由に出入りしている。 なぜかというとそれは当家にクーラーがないからだ。だから夏は家中の窓&引き戸がフルオープン。それなのにこの家には網戸というものがない。要するに家の「内」と「外」の境界が曖昧なのだ。だから虫も動物も入り放題。住み放題。 今年はこの暑さで特に蚊が元気いっぱいだ。蚊取り線香代だけでたいした出費である。つけろよ網戸。 しかし網戸がない生活には、何ものにも代え難いメリットがある。 網戸の掃除をしなくていいのだ。 それを思えばちょっとカユイくらいなんのことがあろう。 今日はそんな虫屋敷の住人isiiが蚊のやっつけ方の極意をみなさんに教えましょう。 蚊は非常に敏捷だが、針を刺している間は動けない。だから蚊がとまってもすぐに叩こうとしてはいけない。ガマンしてガマンて、針が刺さるまで待って、渾身の殺意を込めて叩き潰す。これで百発百中。 刺されたのだからカユくはなるが、それはしかたない。蚊は死んじゃうのだからおあいこだ。全然おあいこじゃないって。 しかし、蚊を見ていると「種の起源」に疑念が湧いてこないか。適者生存が自然界の法則ならば、なぜ刺してもカユくしないとか、音を立てずに飛ぶとかいう方向に進化しないのだろう。カユくさえならなければ、ちょっと献血してやるくらいどってことはなく、親の仇のように迫害されることもないはずだ。これのどこが適者だ、え、ダーウィン。 とウナクールを塗りながら進化論に思いをはせる夏。 最後に、蚊に刺されてもカユく感じなくなるという究極の解決法を伝授しよう。 「蚤だらけの猫」を家に放つのである。 蚤に刺されてみると、あれほど憎かった蚊が急にかわいいもんだと思えてくる。これは確実。 ぜひお試しを。 |
ぱわれす でいず 24 ばくはつ五郎篇 00/8/20 「ばくはつ五郎」を覚えておられる方はいるだろうか。 「あしたのジョー」と同じ昭和45年に放送され、話題になることも再放送されることもなく消えた学園アニメである。 主人公、ある学園の新聞部員「ばくはつ五郎」が、毎回おこるさまざまな事件の果てに、「ばくはつだー!」と叫んでキレまくり暴れまくるというむちゃくちゃな話だ。 「キレる10代」を30年前に先取りした問題作・・・・・なわけはなくて、子供心にも「なんなんだこれは」と思っていたし、主人公の顔も、具体的なエピソードもひとつとして思い出せない。 ただクライマックスの「えーい、ばくはつだー!」という叫びと、 ♪ばっくはつ五郎は、ばくはっつ五郎ぉぉは、いかしているんだよ〜♪ という主題歌だけが消しがたく焼き付いている。 それにしても「いかす」って、すごい言葉だ。 これから「イケてる」と言わずに「いかす」と言ってみよう。新鮮かも知れない。「Nさん、そのヒゲ、いかしてますねー」 ・・・新鮮すぎて許容範囲を超える。 そんないかすアニメ。ばくはつ五郎。 長い長い夏休みが終わってあしたから仕事だ、という今日、ほんとならキューピーコーワゴールドAでも飲んで元気を出さねばならぬ時に、なぜか思い出してしまって閉口している。「いかしているんだよ〜♪」がアタマから離れない。30年前知らずに悪質なレトロウィルスに感染したみたいなもんだ。 自分だけこんな脱力感を味わうのは癪なので、みんなにも思い出させてやろう、という悪意の元に主題歌全文を調査して公開することにした。 ♪ワン・ツー・スリー・フォー ストップ!ストップ! ストップと言ったら涙が止まる ケンカをしたってくよくよするな 笑ってしまえば忘れるものさ(イエイ!) そんなこと そんなこと 考えているから ばくはつ五郎は ばくはつ五郎は いかしているんだよ ・・・どうだ!! この調子で3番まで、ばくはつ五郎は緑の野辺を歩いたり、空に「好きだ」と叫んだりするのだが、この辺で勘弁してあげよう。 |
ぱわれす でいず 23 姉篇 00/8/13 弟が婚約者を連れてきたいと電話してきた。 「ええよー。お姉ちゃんにはもう会うたん?」 私たちにはもう一人姉がいるのだ。 「まだや。まず無難な方からと思て。ヨーコ姉ちゃんは式当日や」 「・・・・そやね。それがいいかも」 姉は変わっている。 変わっている人にも2種類あって、一目でわかる場合と、見かけは普通なのだがしばらくして「・・・変わっとんな・・・」と知れてくる場合だが、姉は前者だ。だって髪がピンクなのだ。とてもわかりやすい。 今でこそ、ピンクやブルーの髪も、心斎橋あたりに行けば一人や二人見つかるだろうが、姉は20年前からそうなのだ。それに「姉」ってことは私より上ってことだ。なのに髪はピンク。服は原色。緑のトップに紫のボトムとか、オレンジのシャツにヒョウ柄のパンツとか。こうなったら趣味の善し悪しなど、誰にも判断できない。センスの治外法権。猫の顔の形した銀サンダルとか、「誰が買うねん」と思うでしょ。私の姉が買うのだ。 ある時、姉とパンチパーマの義兄が「ちゃぶ台」を買いに行った。星一徹が毎週ひっくり返してたアレだ。しかし二人を見て、家具屋店主は大きな木の根っこでできたやつとか、黒檀で足が虎になってるやつしか出してくれなくて、どうしてもちゃぶ台が買えなかったということだ。「ちゃぶ台やゆうてるのにー!」 本気でちゃぶ台買いたかったら堅気に見えるようにしていくべきだと思う。 そんな姉である。 結婚まであと少し。花嫁にいらぬ動揺を与える必要はない。それまでは見かけも中身も無難な私で安心していてもらおう。 |
ぱわれす でいず 22 衝動買い篇 00/8/6 ドレスを買った。 ・・・もうこの一行で終わってもいいくらいの脱力度だが、レットミーエクスプレイン。説明させてほしい。 弟が来月結婚する。披露宴はないが、一応立派なホテルで式を挙げる。 36歳の花婿の38歳の姉は何を着りゃいいのかなぁ、と、デパートの婦人服フロアで、「フォーマル」の案内板についつい引かれて行くと、そこは非日常の色彩とデザインの異世界が広がっていた。レッド、パープル、ゴールドのヒカリモノにレース、シフォン、ビーズの洪水・・・ OH!ハウゴージャス! ふつうの服なら自分に似合うかどうか、だいたい見当がつくが、この生地の光り方、極端な露出度、ヒラヒラの長い裾。どうしても「それを着た私」ではなく「それを着たジュリア・ロバーツ」か「ダイアナ妃」しかイメージできない。 そして、試着室の鏡でその落差にめまいを起こしかけている私に、何もかも心得た店員のお姉さんは「ではこんなのはいかがでしょう」と矢継ぎ早に別なデザインを持ってくる。そのうち現実感がマヒしてくる。で、最初のショックが大きかっただけに、「あ、これならいいかも」ってものに出会ってしまうとうれしくてつい舞い上がる。「おきれいーお似合いー」ここぞとばかり盛り上げるお姉さん。もうすっかり客観的判断力をなくしている私。買うしかないでしょう。 というわけなのである。 ・・・なんの説明にもなってないな。 しかも、ただそれだけなら「衝動買いってそんなもんよ」と言ってくださる方もあろうが、私は「2着」買っちゃったのだ。ベージュのプリンセスラインとブルーのAライン肩シースルーと。それにゴールドのストールとビーズのボレロまで。 弟の地味な式にはとても着ていけない。同世代の友人に今から結婚するってタマはほとんど残ってない。どうするんだ、これ。 バカと呼んでください。 |
ぱわれす でいず 21 ポイ捨て篇 00/7/30 当家は駅から徒歩2分、比較的広い通りに面して建っている。 その通りは、高村薫の初期作品「わが手に拳銃を」で主人公が何度も疾走した道である。主人公は当家のことも覚えてるはずだ。目立つから。 何で目立つかというと、家の前にヒマラヤ杉、棕櫚、ブラシの木、そのほか名前も知らない木々が漫然と繁茂し、歩道に張り出して著しく通行の邪魔になっているからだ。秋には野生と化した葡萄の木から腐った実が通行人に降り注ぐ。 良く苦情が来ないものだ。 しかし、駅から2分というと、駅を出て一服つけたタバコをちょうど吸い終わる距離、駅で買った缶ジュースを飲み終わる距離。そしてそこには「さあ捨ててください」と言わんばかりの荒れ放題の庭。 その結果、朝になれば当家の前には吸い殻、空き缶、菓子袋、新聞etc.etc. 気持ちは分かる。 しかしそれは、若い娘がヘソを出して歩いてたからといって抱きついていいというものではないように、いくら住む者のやる気が感じられない庭であってもものを捨てていいってことにはならない。 まして、トイレ代わりにするなど言語道断。 ある日遅く家に帰ると、植え込みの影にガサガサと不審なオヤジ。すわドロボーか!と見れば立ち○o○の真っ最中。 日頃温厚な私もブチ切れた。「なにしとんすかぁぁ!!」 「・・・あ、えろうすんまへ〜ん!」 しかし途中でやめるわけにはいかないオヤジ。見ているわけにもいかない私。 数秒の最低の「間」の後、怒りで湯気を出しつつ家に入った私は、屋外灯をぜんぶつけてオヤジをライトアップしてやったのであった。 |
ぱわれす でいず 20 奥さん篇 00/7/20 私は行きがかり上、携帯電話を2台も持っている。どういう行きがかりかは面倒なので説明しないが、行きがかりで持っているだけなので、使うことはほとんどない。だからいつまでたっても使い慣れないし、しょっちゅう置き忘れるし、たまに鳴ると驚いて持っているものを取り落としたりする。非常にやっかいな道具だ。 そのめったに鳴らないケイタイが鳴った。緊張して取ると 「奥さんだっか?」 と、覚えのあるようなないようなおっちゃん声。 私は一瞬混乱した。私はケイタイに慣れていないうえ、「奥さん」と呼ばれることにも慣れていない。 ウロが来た頭で「そうだ私も奥さんだ」と思い起こし、「はいそうです!」 おっちゃん「え・・・、奥さん?」 私「そうですが!?」 おっちゃん「・・・いやあ・・・奥さん・・・の奥さん?」 こんなとんちんかんな会話の果てに、やっとこれが「奥」さんという人にかけたマチガイ電話であることが判明。普通すぐ気づくことだが、双方が粗忽だとこういうことになる。 私の携帯番号の前の持ち主が「奥」さんだったらしい。それからもたまに受話器の向こうからいきなり「もしもし奥さん」と呼びかけられる。昼間から。それもなんだか油声の怪しげなおやじばかり。どんな人だったんだろう奥さん。どうしてDoCoMo解約したんだろうこのモバイル時代に。事情があったのか。今どうしている奥さん。元気か。 ちなみに広告業界では雑誌「すてきな奥さん」を「すて奥」、「おはよう奥さん」を「おは奥」と略称する。慣れると何とも思わないが、「おは奥」。 ぱわれす指数高し。 |
ぱわれす でいず 19 猫のもぐらたたき篇 00/7/13 家中に猫がいる。 蜂騒動が収まったと思えば、今度は猫だ。ひと月ほど前から当家の庭に住み着いた猫の一家が、庭だけでは飽きたらず、家猫になる決心をしたらしい。 思い出すこと約1か月前、庭で仔猫の鳴き声がした。母猫と、3匹のいたいけな仔猫たち。当家の雑木林のような荒れ庭で無心に遊んでいる。心なごむ光景だった。 梅雨時で大雨の降る夜など、軒先で鳴く声を聞き「あー冷たかろう怖かろう。哀れだ不憫だ。」と心痛んだが、「いやいや、一時の仏心は却って仇。立派な野良に育てるんや」と、鬼となって無視を続けた。もちろん、餌などやらない。 そんなある日の深夜、PCからふと目を上げると、とことこと部屋を横切る猫の親子。この家が隙間だらけで、住人が隙だらけであることを、とっくに見抜いていたらしい。 そして家人が長い出張に出かけ、蜂の大発生が終息した数日後、起きて階下に降りると、いきなり猫がいる。追っ払って台所に行くとそこにも猫がいる。おいおいと、居間に戻るとそこにも。 もぐらたたきをしているようだ。 訪れていただいた方はご存知だが、当家はバカみたいに広い。住人は今私一人だ。絶えず、私のいないどこかの部屋で、ガサゴソ音がする。雨の翌日には点々と泥足の跡。家中が猫臭い。最近は私を見ても逃げるどころか、ニャー、とかいって寄ってこようとさえする。「一家で家猫」プロジェクト、着々進行中。この文を打っているこの瞬間も、のれんの向こうに猫影が。 どうすればいいのだ。私は本当に困っている。 |
ぱわれす でいず 18 蜂篇 00/7/2 昨日のことだが、いきなり家の中に「蜂」が大発生した。玄関が蜂だらけである。あわてて玄関を封鎖し、金鳥蚊取り線香を焚いてみた。しかし蜂には何の効果もない。蚊にだって特に効果はないのだから仕方ないか。 しかしこの事態をどうしたものか。われわれはただ「困りましたなぁ」と困ってみただけで、とりあえずその日は寝てしまうことにした。次の日、家人の発見によると玄関床下に蜂が巣を作ったようで、戸板のすき間から湧いて出てくるらしい。 外から来るものならば防ぐ方法はあるが、発生源は家の中。なめくじが歩く家。ネズミが走る家。イタチが住みつく家。野良猫が通過する家。そのうえ蜂まで湧く家。 最初は蜂がそばに来るたびに「きゃー」「こわいー」などとギャルライクなリアクションをしていた私だが、どうも30過ぎた女には興味がないらしく、襲って来る気配はない。 しかし、そうはいっても、相手は蜂だし、どこでどう機嫌を損ねるか知れたものではない。しかも常時20匹くらい飛び回っている。それにうるさいのだ。「ぶんぶんぶん〜ハチがとぶ〜♪」というのどかな唄があるが、家の中でぶんぶん飛ばれた日にゃあ。 外聞も悪い。新聞の集金さんも佐川のお兄ちゃんもびっくりだ。「蜂屋敷」とか呼ばれるだろう。「蝿屋敷」よりいいか、なんて自分を慰めてみるが。 で、どうしたかというと、武器は「掃除機」。一匹ずつ掃除機で吸い込む。これが案外楽しい。飛んでるやつを空中でキャッチできるほどに熟達。しかし吸っても吸っても数は減らない。 「なんだか根本的な解決につながってない気がするんですけど…」という私に、家人は「だいじょうぶ。主力部隊は殲滅や」と強気。何を根拠に。それに来週から家人は当分出張だ。私一人で、明日からどうしましょう。 |
蜂騒動その後 蜂の発生は、3日目にしてぴたりと止まった。「現代農業」(!)を購読する友人によると、日本の蜂はワガママで、環境が悪いと巣を捨ててさっさとどっかへ行っちまうらしい。行方不明者続出で早期に見限ってくれたのだろうか。とにかく一安心だ。しかし社内きってのスパイシーガールS嬢いわく、「蜂に環境悪いって認定されるのもナンですねえ」 「・・・・・・。」 ![]() 長いこと仕事を休み、HP更新もストップしてみなさまにご心配をおかけしているisiiでございますが、本人はいたって機嫌良く蟄居閉門生活を送っております。心配などなさっていただくと、この元気に太った姿を見ると腹が立ちますので、どうぞお気にかけられることなく、「お気楽こきやがって」とか思っておいてくださいませ。 だったら出てこいよ、という意見もございましょうが、まあ、そこはそれ、夏ですし。 しばらく休刊しておりました「ぱわれす・でいず」、充電が完了した、というより、家にいてもどこにいてもとほほな出来事が尽きませんので、ぽちぽちと再開したいと存じます。 また、ときどき見に来てくださいませ。今後ともよろしゅうに… |
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